隣人

先日、ふと家を出たら、205号室に鍵がついたままでした。「あれ?鍵抜き忘れたのかな?」と思ってあまり気にもかけずいました。関東に来てから、隣人との付き合いもなく、通路で出会ったら会釈する程度。ただ今の部屋に住んで早7年経っているので、何度か205号室の女性とはすれ違ったことだけがありました。そして、2、3日間たってもそのままの状態でした。
事件の香りがプンプンしてきました。。会社から帰った23:00。自分の部屋に荷物を置き、手には携帯を握り締めて、意を決して、ドアの横についている呼び出しボタンを押してみる。「ポーン」、「ポーン」、、、普段は「ピンポーン」と鳴るのだが壊れているみたいだ。ただ、ドアが厚く防音が結構聞いているのでドアに耳を当ててみないとその音は確認できなかった。次の瞬間、女性の甲高い声が聞こえてきた。「今何時だと思っているんですか!」「いいかげんにして下さい!」。ドアは開く様子がなく、ただドア越しに叫ばれていた。私はてっきり旅行とか出かけていて鍵を抜き忘れたままか、事件だと思っていたため、部屋に誰もいないと思っていたので驚いた。女性はヒステリックに怒っていた。
別に私も怪しいものではないので、「ドアに鍵がついたままですよ」と言たが、ドア越しのせいで、あまり聞こえていないようだ。その後も呼び出しボタンを数回押してみた。女性はさらに怒ったように、「ひろくんちょっと!!」一緒にいるらしき男性を呼んでいるらしい。しばらくして、チェーンをかけたままのドアが開いた。その男性は、細いドアの隙間から顔をのぞかせた。丸顔で無精ひげをはやし、なぜか茶色の細長いサングラスをかけていた。Tシャツ、トランクス姿で怪訝そうに私に言った。「なんでしょうか?」。「ドアに鍵がついたままなのですが・・・どうしたのかと思いまして。」と私が返事をするとちょっと驚いた顔をしていた。「じゃぁ、抜いて渡しますね。」ドアから鍵を抜き、彼に手渡した。「隣の部屋の方ですか?」物騒な面持ちとは異なり、かなり丁寧な感じに見えた。「ありがとうございます」彼は丁寧にお辞儀をしてドアを閉めた。
ほっとしながら部屋に戻り、最初から自分が隣の部屋の者だと名乗ればよかったとふと思った。しかし、部屋にいるのに鍵が抜かれていないままとはどういうことだろう?しかも2、3日も気づかないとは・・・。
数日経って、今日、ゴミを出すために部屋を出たら、買い物のビニールを持った女性が部屋に入るところだった。あぁ、この女性が私に怒った人なんだと思いつつ、会釈をしてすれ違った。ゴミを出し終えて部屋に戻ると、私の部屋の呼び出し音が鳴った。「ん?」出てみると、その女性が立っていた。
「先日は、どうもありがとうございました。新聞の方だと思ってかなりきつく言ってしまいました。これ申し訳ないので受け取ってください。」手に持っていた包装された箱を私に差し出した。「当たり前のことをしただけですから、お気になさらずに・・・」といったが、差し出されたままの箱を受け取らない訳にはいかず頂いた。「ありがとうございます。」
隣人とは疎遠になるのが関東だという事を良く聞きます。隣が誰なのか。何をしている方なのか。ほんとにそう思いますし、関わることもありません。ただ、今回のようにおかしな状況はちゃんと伝えてあげれて良かったと思います。そのちょっとした親切が菓子折りとして戻ってきたことがとてもうれしかったです。
最後にちょっと動転して聞き忘れたことがある。なぜ、鍵がついたままだったのか・・・。今も謎は残ったままである。